2011年5月10日火曜日

【読書メモ】ザ・ゴール

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か
エリヤフ・ゴールドラット
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 459

随分昔に読んで、その時はいい本だけどプロジェクト型である自分の仕事(IT系SIer)では、このノウハウはあまり通用しないかなと思い、そのままにしてありました。
しかし先日「クリティカルチェーン」を読んで、TOC理論がプロジェクト型の仕事に当てはめられていく過程を読みすすめていくうちに、一度シリーズを一から読み直したいという衝動に駆られ、久しぶりに本書を読んでみることにしました。
本書を読んでいて
1.従業員というのは、実は企業の目的というのをあまり理解していないものである。
2.目的への達成度を測定するのに間違った指標、複雑すぎる指標を利用しがちである。
3.物事の本質を抜き出してモデル化すると、その姿は意外なほどシンプルである。
という教訓を得ることができました。

また、「クリティカルチェーン」を読んだあとだったせいか、前回読んだときより本書でのポイントが自分の中にすんなり入ってきてとても読みやすく感じました。

本書で紹介されている具体的な方法論(バッチサイズの変更、ボトルネックのリソースを最大化する方法)などは、工場での製造現場でしか利用できないことなのかもしれませんが、本書で提示されている概念や主人公たちの奮闘する姿勢などはとても参考になりました。ただ概念や姿勢の話などになると、実は次作の「ザ・ゴール2」の中でより詳しく説明されているのでそちらの方がより参考になると思います。
しかし、いきなり2の方を読むよりは本書を導入編と位置づけて一度読んでおいたほうが、理解もより深まるでしょう。

個人的には、小説形式のビジネス本というのはポイントがわかりづらいし、そのポイントにいたるまでの過程にまどろっこしさを感じてしまうのであまり好きではありませが、この本は小説としても楽しく読めました。昨年話題となった「もしドラ」といい、売れるビジネス本というのは、エンターテイメントの要素も必要なんだなと改めて思いました。

2011年5月5日木曜日

【XYZZYTips】タブキー押下時に囲み文字を抜ける

Eclipseだと文字列を書いたりしている場合に、タブキーを押すと文字列(「"」で囲まれた範囲)から抜けることができるのですが、それと似たようなことをXYZZYでもできないだろうかということで、タブキーを押したときに隣にある文字列が囲み文字列(「"」、「'」、「>」)などのときは、カーソルを一つさきにすすめるというマクロを作ってみました。

その数学が戦略を決める

その数学が戦略を決める
イアン・エアーズ
文藝春秋
売り上げランキング: 20404

本書は大量のデータをコンピュータで分析し、それらを利用して物事の判断を行う手法を紹介しています。
本書で紹介している分析方法を大きく二つあり、ひとつは回帰分析、ニューラルネットワークを利用する方法、もうひとつは無作為抽出テストを利用する方法です。特に回帰分析、ニューラルネットワークを利用する方法を「絶対計算」と呼び、本書を通じて語られるキーワードになっています。

本書では、この「絶対計算」が利用されている事例がワインの品質にはじまり、マーケティング、出会い系サイト、医療、映画産業などたくさん登場します。

Amazon、GoogleなどのWebサイトや最近何かと話題のFacebookなどのソーシャル系サイトがこのような技術を利用していることは、知っていましたけど、アメリカではこんなに広い範囲でこのような技術が利用されていると知って驚きました。それにこの本自体が出版されてから時間がたっているので、今ではもっと広い分野で利用されているのでしょう。

しかし、個人的に本書で重要だと思われる部分は、本書で「直感を定量化する手法」として紹介されている平均値と標準偏差を利用して、信頼区間を求めつつ直感を補正するという方法を紹介している部分だと思います。また、ベイズ統計を利用して複合的な確率を正しく扱う方法も大変重要だと思いました。
本書では、個人(消費者)がこのような「統計的手法」を身につけることが重要であり、上記2つの手法は身につけなければならないたくさんの手法のほんの導入にすぎず、多くの勉強が必要だと述べています。
そして、コンピュータがデータを元に判断をする時代になると多くの専門家が不要になる時代が来る。たとえそういう時代になったとしても、人は一切不要になるというわけではなく、求められる役割が違ってくるということも述べられており、これもまた本書の重要な提言の一つだと感じました。

最後に本書を読みながら思ったのですが、「個人情報保護法」は実はあまりいい法律ではないのではないでしょうか?今までは「個人情報は保護されている」という安心感がちまたの詐欺事件の原因になっていると考えていたのですが、本書で紹介されているような手法が社会に浸透することへの妨げになっているのではないかと考えるからです。
まあこのような主張も、本書の著者に言わせると「データによる根拠」が必要なのでしょうが・・・。